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日韓、揺れる通貨交換合意はマイナスだ

 ◆ウォン安定は日本の対韓協調次第

韓国の李明博大統領は同国が不法占拠している島根県竹島に足を踏み入れたあと、自国の国会議員を前に日本の国際社会での影響力は「昔と同じではない」と述べたという。確かに、日本は慢性デフレと超円高のために国力が弱体化し、国際的地位低下につながっているのだが、韓国が日本を軽視するなら、自身が深刻な代償を払う羽目になると言わざるを得ない。


日韓の経済関係はすべてがそうでなくても、多くの面でライバル関係にあり、「共に栄える(ウィンウィン)」ではなく、一方が浮上すれば他方が沈む「ゼロサム」関係になりがちである。例えば、韓国は日本円に対するウォン安容認政策をとっている。その過程で、韓国企業の国際競争力と株価が上昇するのと対照的に、日本の電機産業などは収益力を失い、日本株安を招いてきた。このことは本欄8月12日付で詳細に論じた通りなのだが、日本政府はそんな問題意識に乏しいままだ。

 だが、自国の通貨安をテコにしたゼロサムは、一歩道を誤れば急峻(きゅうしゅん)な崖から転落する危険と隣り合わせのゲームである。とくに韓国の金融市場は外国からの短期資本流入に大きく依存しており、いったん資本流出が起きると、ウォン相場の下落に歯止めがかからなくなる恐れがある。

1997年のアジア通貨危機ではウォン暴落と急激な資本流出が同時進行し、サムスンなど一部を除いて多くの財閥系企業が経営破綻した。後述するが、今、この脆弱(ぜいじゃく)さをカバーできる最有力国は、ドル、欧州共通通貨ユーロに次ぐ国際通貨円を持つ隣国日本である。


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 グラフは韓国の対外短期債務残高と韓国ウォン相場の相関を表している。全体を通じて、ウォン相場が韓国の対外短期債務残高と連動する傾向が読みとれる。短期債務は2008年9月の「リーマン・ショック」に伴って起きた資本流出によって急減し、ウォンは急落した。アジア危機当時のようにウォン下落が底割れしないのは、ウォン安に伴う韓国企業の輸出競争力上昇効果がめざましいからだ。

 リーマン前に1円当たり9・5ウォンの相場は09年初めに15ウォン台まで下落し、現在でも14ウォン台を維持している。ウォンが円に対して5割以上も安くなったために、サムスンなどは日本のライバル企業を圧倒する。電機産業の場合、液晶テレビなど多くの製品で品質や技術面での日韓の差はほとんどないとされるだけに、円高・ウォン安が日本企業を苦境に追い込んでいる。海外の投資ファンドはそれをみて、韓国企業株を買い、日本企業株を売る株式売買モデルを展開している。



 ◆ユーロ国危機の余波

 だが、韓国の通貨・金融市場は10年春のギリシャに始まるユーロ加盟国の債務危機の余波を次第に強く受けるようになってきた。信用不安のためにドル資金を調達できなくなった欧州系金融機関が韓国などから短期資本を引き揚げるようになり、11年秋には外貨不足に陥った浦項製鉄が日本での外貨調達に奔走する羽目になった。

韓国の対外短期債務の国内総生産(GDP)比でみた対外資本依存の度合いはアジア通貨危機当時の水準並みと高い。短期資本の流出に危機感を抱いた韓国の通貨当局は日本に対して、緊急時の外貨の融通を求めてきた。その結果が昨年10月の李大統領と野田佳彦首相の通貨交換(スワップ)枠拡大合意である。それまでの130億ドルから700億ドルへの枠拡大で合意した。韓国にとって通貨スワップとは、国際金融市場で交換性に乏しいウォンを刷るだけで国際通貨である円やドルと交換できる「おいしい」話である。

 韓国の対外短期債務総額は1360億ドルに上るが、その半額相当を難なく日本から調達できる。この協定があるおかげで、韓国はウォン安を放置しても、ウォン崩落は避けられる。おまけに韓国企業が日本に対して競争優位に立つ。外部からすれば、日本政府のお人よしぶりを象徴しているように見えるだろう。

 ◆スワップ協定は元に?

 このスワップ協定は10月に期限が到来する。延長の方向で両国が検討していたら李大統領が10日、竹島に上陸した。13日には素朴に「金融協力維持」を言明していた野田政権も、「今の段階でその後どうするかは白紙だ」(24日の野田首相発言)と言い出した。有力なのは、もとの130億ドル枠に戻す案だ。

 ユーロ不安が続く中での日韓2国間の金融関係がこじれることは国際金融市場にとってマイナスだ。金融を露骨な形で外交上の駆け引きに使うのは慎重であるべきだ。が、韓国が日本に対して増長する発言や行動を取り続けるなら、日本の対韓国世論も寛容なままではいられないだろう。



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