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ニューヨークのど真ん中に「食の砂漠」

公立小学校で代替教員をする友人が、「イースト・ビレッジは『フード・デザート(食の砂漠)』なのよ。子どもが可哀想だわ」と話していたので驚いた。


彼女が、夏休み前に派遣された学校がイースト・ビレッジ、つまり、ニューヨーク・マンハッタン島の、ウォール街や市役所がある金融・行政区から、わずか2キロほど北東に位置する地区にあった。その地区は、大きなスーパーマーケットがなく、点在する小さな食料品店や雑貨屋では生鮮食品が売られていない「食の砂漠」なのだという。


 ニューヨーク市ブラウンズビル地域のスーパーマーケットで山積みにされた缶詰食品
 イースト・ビレッジの中心は、日本の居酒屋やラーメン屋が立ち並ぶ「リトル・トーキョー」と呼ばれる通りもあり、若者やアーティストが集まる。リトル・トーキョーから東に歩くと、お洒落なレストランやブティックが急速に増えている地域。まさか、そこがフード・デザートだとは思わなかった。しかし、確かに、住民は移民が多く、さらに東に行くと、ヒスパニックやアフリカ系米国人の姿や、低所得層向けの集合住宅が目立つ。

マンハッタンの中でフード・デザートとしていつも問題になるのは、アフリカ系米国人の住民の割合が9割を超えるハーレムだけかと思っていた。ハーレムは、マンハッタンの北部に位置し、ウォール街や行政区からは15キロ離れているため、マンハッタンの中心部とはいえない地域だ。

フード・デザートが問題なのは、新鮮で栄養のある食品が手軽に得られないため、安いファストフードや、缶詰に入った調理済みの食品への依存度が高くなる。その分、体重過多の子どもや住民が増えて、健康を害する確率も高まるという悪循環だ。

「迎えに来る母親や兄弟が巨大なのよ。もちろん、太り気味の子どもも目立つし」――。教員の知人もイースト・ビレッジの小学校の様子をこう話す。

 これで思い出した光景がある。

 ニューヨーク市の中で最も犯罪の発生率が高く、貧困層が住むブラウンズビルという地域だ。ウォール街からは南東に8キロほど離れたところにある。そこで、「唯一まともな食品が買える」と教えられて行ったスーパーマーケットにあったのは、壁沿いに天井までうず高く積まれた缶詰の山。スーパーでこんな光景は見たこともなかった。さらに驚いたのは、マンハッタンのスーパーで見慣れたキャンベルやデルモンテといった大手食品ブランドの缶詰はなく、どれも聞いたことも見たこともないラベルがずらりと並んでいたことだ。

 「唯一のスーパー」というだけあって、店内は広く、新鮮な野菜や果物も豊富に積まれていた。しかし、そこにいるのは従業員ばかりで、巨大な下半身とショッピングカートがひしめいているのは、缶詰の山の方だった。

それは、生鮮食品があるスーパーマーケットがないことだけが、健康問題を引き起こしているのではないのを物語る。新鮮な食品を買いそろえて調理する方が、缶詰を買うよりもお金がかかる。つまり、失業率が高く、所得が低い住民が多いこともフード・デザート問題を引き起こす原因だ。

ブラウンズビルは、人口が約12万人。そのうち7割がアフリカ系米国人で、2割がヒスパニックという人種構成だ。

 訪れたのは昼間だったが、集合住宅が建ち並び、ビルの角には犯罪防止のためにカメラが取り付けられている。学校や公共施設の入り口には金属探知機さえ置かれている。ニューヨーク市も環境改善に努めてきたものの、強盗、発砲などの凶悪犯罪が絶えない。また、通りの電線や金網にスポーツシューズがぶら下がっている。これはその通りでヘロインなど麻薬取引があることを示す。

 一方で、ニューヨークは「レストランのメッカ」だ。お金を出せばもちろんだが、それほど出さなくても、ありとあらゆる国の料理が楽しめる。競争が激しい分、腕試しに世界中の有名シェフが店を開く。

 また、自然派食品ストアとして急速に店舗を増やしているホール・フーズを訪れると、美しく並んだ生鮮食品に圧倒されるほどだ。ずらりと陳列された世界中のハムやチーズ売り場では、慎重に、端切れを試食してから買うグルメな客も多い。

 世界の美食、あるいは美食家が集まる街角からわずか数キロの地域がフード・デザートという現実には呆然とする。たとえ、フード・デザートに大型のスーパーマーケットが進出したところで、ブラウンズビルに見られるように砂漠が解消される見通しはないだろう。

 食の1つをとっても、米国はこれだけの格差を抱える「分断」の国家だ。


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