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貧乏人は麦を食え

「貧乏人は麦を食え」とは、第3次吉田茂内閣の池田勇人蔵相の“迷言”として知られる。実際には国会で、生産者米価高騰に対する所感を聞かれ、「所得に応じて、少ない人は麦を多く、多い人は米を食うような経済原則に沿うべきだ」という答弁が、新聞で“意訳”されて報じられ、瞬く間に国民に大臣の差別的発言として広がったようだ。


さて、世界の富を再配分するとまでいわれるインターネット環境が膨張を続ける今、再び「貧乏人は麦」的な発言が聞こえてきた。レンタルサーバー事業者が企業や団体5700機関ものデータを消失させた前代未聞の損害事件である。さらに慌てて導入した復旧プログラムによって今度は2300機関ものデータが漏洩(ろうえい)する障害を発生させ世間をあきれさせた。障害の原因はセキュリティー強化のためのプログラムの重大な記述ミスを見逃したためということだが、より重大な瑕疵(かし)は別にある。レンタル料金を低く抑えるため、外部のサーバーに保管すべき顧客のバックアップデータを、同じサーバー内の記憶装置に保管していたのだ。

 この事業者は、インターネットを介してサーバーを企業などに貸し出しており、現在はヤフーの100%子会社。低価格をウリに顧客数を伸ばし、現在は5万機関以上。官公庁の利用者も多いという。「外部サーバー」をうたいながら同一サーバー内のバックアップにとどめていたのもコスト優先の経営方針とみられている。「どこより安い」というセールストークをうのみにした顧客が痛い目を見た。自社でバックアップを取っていた顧客もあれば、事業存続が困難になってしまったケースまであり、被害状況はまちまちだが、事業者は「消失データの回復は不可能」と早々と白旗を掲げた。

この事態をみて、あるIT(情報技術)業界に詳しいジャーナリストが「貧乏人はクラウド時代も損をみる」と指摘したのである。いささか乱暴な例えだが、いわんとすることは理解できる。

 低価格化の努力を否定するわけではないし、コスト重視のIT活用を模索する顧客の姿勢を軽視するわけでもない。しかし、多種多様な事業者やサービスが乱立するクラウド環境は、今回と同様のリスクをますます内包する。障害発生時に及ぼす影響も、これまでとは比べものにならない。

 東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた宮城県南三陸町は町役場のサーバーを外部に委託した。「自治体の多くは住民データを外部に出すことに強い抵抗がある」(南三陸町)が、震災を機に被災地の自治体数カ所でサーバーの外部委託が進んだ。民間企業では“持たない経営”はさらに加速している。

 クラウド関連事業者に求められるのはリスクの「見える化」だ。視界不良の「雲」に突っ込めば、サービス会社も顧客も損をみることになる。

産経新聞経済本部 芳賀由明



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