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今、本当にアジア市場なのか?

アジア市場の魅力を改めて振り返りたい。最大の魅力は中間層の拡大にある。現在、アジアには約15億人の中間層が存在する。この中間層はアジアの経済成長スピードに合わせて急激に増加しており、その所得も年々向上している。


このまま進めば、アジアは日本や欧米とならぶ一大市場となる。従って、アジアへいち早く進出し、誰よりも先に先駆者利益を得るメリットは大きい。世界中の競合がひしめく市場だろうがなんだろうが、巨大な成長市場である限り、企業にとってアジアは次の成長エンジンとなる。

 この理屈からすれば、今回のテーマの答えは「YES」だ。しかし、これはすべての企業にとっての答えではない。アジアで2~3割のシェアを取る必要がある大企業にとっては今後の有力な市場だ。狙っているシェアが大きいだけに、中長期の投資を行っても十分にリターンはあるだろう。

 しかし、中堅中小企業やベンチャー企業にとって、今のアジアは必ずしも魅力的な市場とはかぎらない。

確かに、アジアでは中間層が急激に増加しているし、今後もさらに増加の一途をたどるだろう。しかし、現実問題として、目下のアジアは一部の国や都市を除いてまだまだ日本のレベルには遠い。1人当たりの国内総生産(GDP)は数千ドルであり、4万5000ドル(約360万円)を超える日本と比べれば天と地ほどの差がある。そのうえ、競合がひしめき、流通構造も、その獲得手段もアジア独特のややこしさが存在する。このような市場で勝つにはさまざまなことを変えなければならない。

特に価格は重要な要素となる。中堅中小企業にとって価格を下げるのは、そう簡単なことではない。価格を下げるのであれば、それだけ数を売らなければならない。数を売るには、生産設備の増強が必要だ。生産設備の増強には、当然ながら大きな投資が必要となる。アジアで2割のシェアを狙う大企業であれば、それだけの投資も報われるだろう。

しかし、中堅中小企業が必要なのはそんな大きなシェアではなく、今後、落ち込む内需の代替え市場なのである。彼らの本音を言えば、価格も製品もさほど変えなくて済む“ありもの”をそのまま買ってくれる新たな代替え市場が必要なのだ。

 そんな企業にとって、今、本当にアジアなのだろうか。私の答えは「NO」だ。

 今のアジア市場は従来手法を変えなければ取れないし、何かを変えるには経営資源や戦略が必要になる。大きなシェアのための変革は投資に見合うリターンがあるが、代替え市場のための変革はリスク以外の何ものでもない。

多くの企業がアジアで挫折するのを見てきた私は、今こそ中堅中小企業やベンチャー企業は北米を狙うべきだと考えている。


森辺一樹(もりべ かずき)

2002年、ストラテジック・デシジョン・イニシアティブ(SDI)を創業。現会長。1000社を超える企業に対して新興国展開支援の実績を持つ。海外市場開拓コンサルタントの第一人者として活躍中。


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